イーノス II


 フォクトレンダー社のイーノスIIは高級機プロミネント(6x9cm)から距離計を除いた廉価版モデルと言われてはいるが、実態のよく分らないカメラである。1933-34年頃の製品。1931年頃に作られたオリジナルのイーノス(1)があり、これをベースに高級機に仕上げられたのがプロミネント(6x9cm)で、姉妹機としてイーノスIIが作られたと見るのが妥当である。
 多くのスプリングカメラがバネの力で起立するのに対して、このイーノスIIはプロミネント(6x9cm)同様ゼンマイの回転力でチェーン(鎖)を手繰(たぐ)って自動起立する珍しい機構を持っている。オリジナルのイーノス(I)にはこの自動起立の機構は付いていない。プロミネント(6x9cm)は、開閉時の蛇腹の膨らみによる内部の負圧をやわらげる空気孔が付いているが、イーノスIIにはこれがない。
 レンズ上部に取り付けられた反射ファインダーは1930年以前の折り畳み式蛇腹カメラによく見られる形式だが、蛇腹カメラがバネの力で自動起立する、いわゆるスプリングカメラ、になってからはだんだん姿を消していった。重宝なファインダーであるがプロミネント(6x9cm)にはこれが付いていない。この反射ファインダーは内部の劣化あって屋外では良く見えないものが多いが、このイーノスIIのそれは大変クリアで明るいところでもよく見える。ボディにあるアイレベル・ファインダーは金属枠が起立するだけの単純な透視式である。中板を起こすと視野がセミ判になる。何れのファインダーも視野は正確なものではなくアバウトに撮って後でトリミングすることになる。スプリングカメラのファインダーは複雑なものもあるが概してアテにならないものが多く、それならこのイーノスIIのように単純なファインダーの方が好感がもてる。フィルム送りは赤窓式、セミ判が撮れるように赤窓は二つある。

 レンジファインダー(連動距離計)が無い分造りはシンプルであるが、手のこんだ「削り出し」の籠型ノブなどはプロミネント(6x9cm)と同じもので、カメラ全体にも丁寧な工作が感じられる。右の写真の、右側のノブが巻き戻し用、左が距離調節用のノブで、このノブには1メートルから∞までの距離目盛りが刻まれている。プロミネント(6x9cm)の巻き戻しノブはボディの反対側にありこのように並んではいない。
 カメラを立てるための脚がベッドの下に付いている。蛇腹カメラよく見られるものであるが、この機構が凝っていてパチンと小気味よく開閉するのはフォクトレンダーならではの造りである。このカメラには、あの独特のVoigtlanderのロゴは全部で4つあり、当時輝いていたブランドの誇らしげな様子が窺える。
 レンズはヘリア付きもあるが、このイーノスIIにはフォクトレンダー・アナスチグマット・スコパー(初期のスコパー)10.5cm、F4.5が付いている。
 シャッターはプロミネント(6x9cm)同様、リムセットコンパー、T、B、1〜1/250秒、セルフタイマー付である。特にメンテした形跡はないが今でもよく動く、リムセットコンパーの特徴である。

 120フィルムが使えるので今でも撮影可能である。重さは670g。ピント合わせは目測式であるが、ボディ側からノブによって行う方法はフォクトレンダー独特の機構で、後のベッサやベッサIIにも受け継がれている。実際に手持ちで写してみると操作性は悪くなく、このアナスチグマット・スコパーは同時代のレンズとしてはフレアが少なくコントラストの高い画像が得られる。




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