ユニベックス マーキュリー


 1938年に発売された米国 Universal Camera Corp.製のレンズ交換可能な35mmハーフサイズカメラ。

 Universal Camera Corp.(New York)は40種以上のカメラや撮影機、フィルムを常に大衆のためにローコストで供給するといいうモットーのメーカーであった。特にフィルムはベルギーで自社製品専用のパッケージを作って低価格を実現し、市場に供給していた。マーキュリー社の戦前のカメラには同社専用フィルム(パッケージ)が必要だった。1940年ヨーロッパで大戦が始まりベルギーからのフィルム輸入が困難になっていった。USA国内で自社パッキングを始めたものゝ供給難は解消されず、市販フィルムに対応せざるを得なくなった(参考文献: McKEOWN's Orice guide to Cameras)。

 ユニベックスマーキュリーは戦前のマーキュリーI型と戦後のII型がある。I型には自社製フィルム(専用マガジン)が必要である。戦後のII型になって市販の35mmフィルムが使えるようになった。総アルミダイキャストの精密で頑丈な、しかしハーフ判としては少々重いカメラである。

 ユニークなロータリーシャッター
 マーキュリーの大きな特長はカメラ上部の半円形の突起だろう。一度見たら忘れられないルックスだ。この半円形の衝立(ついたて)には理由がある。ロータリー式メタルフォーカルプレーンシャッターを採用しているためで、あの奇妙な半月の中で大きな円盤が回転するのである。すなわち半円形の衝立は Shutter Chamber の一部になっているのである。シャッタースピードは2枚の円盤で作られるスリットの幅(開口部)で決められる。この円盤を組み合わせてできるスリットは当然平行ではなく扇型になる。扇型のスリットがフィルムの前をよぎってシャッターの役目をするので、一見露光ムラが起きそうだが角速度が一定であるためその影響はない。シネカメラにもよく見られるシャッター方式である。シャッタースピードの設定は、シャッターダイアルを押しながら回すと二枚の円盤の一つだけが回転して必要な扇形の開角度を作り出す原始的な方式だ。最低速の1/20秒で約120°の開角になる。1/1000秒ではスリット幅は外側の一番広いところでも3mmくらいと狭くなる。
 シャッタースピードは、T、B、1/20、1/30、1/40、1/60、1/100、1/300、1/1000秒と変則的な刻みになっている。この半月形の衝立には距離別の深度表が張り付けてあり、これがいかにもこのカメラを安っぽく見せている。
Univex Mercury I
Uneivex Mercury I





Univex Mercury II
Uneivex Mercury II

 レンズは・・・
 レンズは独自のスクリューマウントで交換可能である。戦前のI型には Tricor 35mm F3.5、戦後のII型にはコーティング付きのF2.7が付いている。交換レンズはWollensak製のHexar 35mm F2やテレの75mm、125mmレンズなどもあったようだが市場で見かけることは先ずない。


 そのた
 ボディには二つのアクセサリーシューが付いている。その一つ(センター側)はF接点のホットシューになっているが、接点の位置が違うので現在のストロボなどはそのまゝでは使えない。しかし、戦前からホットシューを組み込んだあたりは「ナウい」カメラであったことも事実だ。ホットシュー以外に接点はないので普通のフラッシュを使って撮影することはできない。マーキュリー専用に改造した自作ストロボで撮ってみたら1/20秒で同調し十分実用になることがわかった。これ以上の高速ではタイミングがF接点のせいでシャッター盤の一部がフィルムに写ってしまう。もう一方のシューは単独距離計や専用露出計を付けるためのものだ。
 I型は専用マガジンを使うので巻き戻しノブはついていない。そのせいで大きさは戦後のII型に比べると一回り小さくできているが、それでもバルナックライカより大きいハーフ判カメラである。II型にいたってはM3も負けるくらいの大きさと重さがある。
 36枚撮りフィルムで65枚の撮影が可能である。オリンパスペンなど日本製のハーフ判カメラはフルサイズの2倍のコマ数の撮影が可能であるが、このカメラは1.8倍見当、すなわち24枚撮りフィルムなら43枚の撮影ができると資料にある。24枚撮りフィルムを入れて実際に撮ってみたら47コマあった。
 ボディの後ろには回転式のフィルムメモと大きな露出換算表が付いている。この換算表は精密な露出の割り出しができるように工夫されているがやや煩雑で使いにくい。
 専用アクセサリーとして専用フラッシュガン、単独距離計や露出計も別売されていたようであるが入手は困難だ。

 「ユニベックスマーキュリーで撮った」という話はあまり聞かないが、「変わり種シャッター」としてよく知られており度々文献などに登場するカメラである。


ユニベックス マーキュリーII型の主な仕様
メーカーUniversal Camera Corp. USA
製造初年1945年(I型は1938年)
フィルム35mm ハーフサイズ(18x24mm) 65枚撮り
フィルムカウンター順算式
ピント合わせ目測式、直進ヘリコイド
レンジファインダーなし
ファインダー逆ガリレイ式
レンズTricor 35mmF2.7(3群3枚)最小絞り F22
Tricor 35mmF3.5(3群3枚)最小絞り F22
他に75、125mmレンズあり、レンズ交換可
シャッターロータリー式メタルフォーカルプレーン
T、B、1/20〜1/1000秒 ホットシューF接点
撮影最短距離1.6 フィート
大きさ・重さ145x95x60mm / 600g



【使用感】
 戦前のカメラだから仕方ないがハーフ判にしては大きく重いカメラだ。シャッターそのものは軽快だがレリーズ時にはかなりのショックがある。しかしなんともユニークなシャッター音だ。標準レンズは35mmなので絞って使えば距離合わせで神経質になることもない。カメラの深度表によれば、F8に絞って距離を10フィートにセットしたとき1.6m〜∞の深度になる。何本か撮ってみたが不思議に大きさや重さはあまり気にならない魅力的なカメラだ。メカの仕上げは一級品。ホールドもよく、よく写る。スナップショットに最適。II型には吊環がないのでストラップ付きのケースが必要である。



【作 例 1】by Univex Mercury II
 Tricor 35mm F2.7 f8 1/300 Fuji PRESTO(ISO400)
sample photo
武者小路実篤記念館(調布) 11/14 '98



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