VPKレンズを35mm一眼レフに付けて楽しむ

 ベストポケットコダック(VPK)は作られてから相当年月が経っているため、そのまゝで撮影できるサンプルは少ない。今の高速フィルムではシャッタースピードが追いつかず適正な露出が得られないのが現状である。
 そこでVPKのレンズだけを他のカメラに転用して独特のソフト効果を楽しんでいる愛好家は少なくない。VPK本体からレンズアセンブリー(シャッターごと)を取り外し、現行の35mm一眼レフに取り付けて撮影する方法である。フレアを直接ファインダーで確認することができ、高速シャッター、自動露出(TTL)が使えるのでどんなフィルムにも対応できるメリットもある。VPKは6x4.5cmサイズのカメラである。35mmSLRで利用する限り広いイメージサークル(6x6cm)の中心部だけを使うことになり、そのため画面四隅でもフレアの出方が安定していて美しい写真が撮れるのである。


ベス単(72mmF6.8)

ブロ単(90mmF6.0)
 取り付け
 Kマウントのペンタックスに取り付けるのがオススメである。理由はヘリコイド(Herikod Extention Tube K)やボディキャップが市販されていて簡単に手に入るからだ。
 VPKからレンズを取り外すにはカメラを畳んだ状態で後ろの赤窓のついた円形の板を左に回して外し、シャッターアセンブリーを止めているリングナットを弛めていけば簡単に取り外すことができる。  一眼レフへの取り付けはいたって簡単、普通はボディキャップを利用する。ペンタックスのボディキャップのセンターに20mmφの穴をあけ、VPKから外したシャッター(レンズ)を後ろからリングナットで締めつける、これだけの作業である。ヘリコイドの先端にこのシャッター(レンズ)の付いたボディキャップを取り付ければそのまゝ撮影可能になる。外したシャッター(レンズ)は何時でも元のVPKに戻すことができ、両方のカメラとも手を加える必要のないのが利点だ。

 VPKの単玉メニスカスレンズの焦点距離は約72mm、凹面が下図のように被写体に向っているので実際の焦点の基点位置はレンズの内部ではなくカメラの内側に寄った点にあり、72mmより少し長いヘリコイドが必要である。幸いこのペンタックスKのヘリコイドは殆ど調整すること無く、無限遠から約30cmの至近距離までピントが合うのでファインダーを覗いてみれば美しいフレアを伴った像が見られるはずである。無限遠でピントがこない時は、シャッターアセンブリー内のレンズを動かして調整することができる。約8mm前後させることができる。完全に調整すればヘリコイドを無駄なく利用することができる。下のブロ単(90mm)はライカの「タンバールもどき」用に作成したものだが、今ではレンズヘッドをすげ替えることによってペンタックスLXにも使えるようにしてある。


Elements Picture


 撮 影
 撮影するときはVPKのシャッターレバーを写真のようにT(タイム)の位置にしてシャッターをレリーズしてオープンにしておく。

 「愛されるベス単(朝日ソノラマ社刊)」に紹介されている絞りの位置は、写真のようにフードの穴を広げて(またはフードを外して)、絞りをいっぱいに開いたところを 、本来の絞り の中間を 、さらに の間を と分かりやすく名前が付けられている。このときF値 はF=6.8、 はF=8、 はF=9くらいになる。カメラ本来の絞り(概算) はF=11、絞りはF=16、はF=22,はF=32でもっと絞り込むとF=48くらいになる。

 ポートレートでの顔のアップは 、半身像は A〜Bが目安であるが、これは好みの問題でもあり各人でフレアの出具合を目で確認するのがベストである。下手すると単なるボケ写真になってしまうので多少慣れが必要になる。一般にこの種のレンスは近景でも遠景でもフレアの出方(白が暗部にカブる)が一定なので、近接ではソフト効果が薄く、遠景ではボケボケに見えることになる。VPK本来の絞りの番号1〜4で撮るとシャープでコントラストの高い写真になる。

 何故ベス単か
 ベス単描写の研究を始めてもう30年近くになる。愛されるベス単(秋谷方、鈴木八郎共著、朝日ソノラマ刊、1977年初版発行)という本を買ったのがこのビョーキの始まりである。当時市販のソフトレンズは少なく、あっても高価だった。VPKは通販で20〜30ドル、ヘリコイドを買っても数千円で本格的なソフト描写が楽しめるのである。いろいろ撮っているうちにベス単にしかない独特の滑らかな描写があることもわかってきた。深度が深くピントの合わせ方によって描写が全く違ってくるのが面白い。奥が深く飽きないレンズである。

 この間、清原光学研究所からVK70R(70mmF5.0)という35mm一眼レフ用「現代版ベス単レンズ」が発売され、我が意を得たりと思ったものだ。明るさは本家より明るいF5、コーティングレンズに進化していても、1群2枚のメニスカス型で凹面を被写体に向ける伝統的な構成、これこそベス単の描写を知り尽くしたメーカーならではの製品である。事実コントラストが高い点を除けば描写はベス単そのものである。その後このメーカーはVK50R(50mmF4.5)に続き、VK105L(105mmF4)という中判用レンズまで出した。

 VPKは15年間造り続けられたカメラであるが年代が古いほどフレアの描写が滑らかなような気がする。VPKは今まで何台買ったか分からないが10台は下らないと思う。レンズ、シャッターは問題なくても蛇腹の破損、各部ネジの欠如など完動品は少なかった。VPKに127フィルムを入れて撮ってみたこともあるが、高速シャッターがないため殆ど実用にならないことも経験した。しかしレンズは優れものである。(T.Kubo)  ベス単レンズをデジカメで楽しむ